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札幌地方裁判所 昭和50年(ワ)1373号 判決 1977年3月08日

原告

松永商事株式会社

右代表者

松永広司

右訴訟代理人

石坂健一

被告

北産商興株式会社

右代表者

金泉政一

右訴訟代理人

森越博史

外二名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一、請求の趣旨

(一)  被告は原告に対し、金二四〇万八〇〇〇円を支払え。

(二)  訴訟費用は被告の負担とする。

二、請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二  当事者双方の主張

一、請求原因

(一)  原告は、昭和四八年七月一九日、債権者訴外北海道信用保証協会、債務者訴外株式会社いなりや、所有者訴外株式会社協同産業間の札幌地方裁判所昭和四八年(ケ)第二八号不動産競売事件において、別紙目録記載の土地(以下本件土地という)の入札に参加し、これを金六六〇万円で落札し、右代金の支払いを了したが、被告は、第二順位者として右代金のうち金三八四万三五〇〇円の交付を受けた。

(二)  右競売の目的たる本件土地は、右競売手続における評価書によれば、いずれも旧国道に接面・隣接して位置し、その評価額は、合計金五八九万八〇〇〇円とされており、原告は、右評価額による最低競売価格を相当と信じて入札、競落したものである。

(三)  ところが、後日、原告が右土地について詳細な調査をしたところ、昭和五〇年四月に至って、右土地は、競売記録評価書に記載された場所に位置せず、旧国道に接面していないのみならず、通路のない袋地であり、かつ、鑑定人による鑑定の結果によれば本件土地の価額は、合計金四一九万二〇〇〇円であることが判明した。

(四)  ところで、民法第五六六条は、目的物についての法律的な欠点に関する担保責任と解すべきであつて、同条所定以外の権利で制限されている場合その他法律的な欠点のある場合も同条が類推適用されるべきである。よつて、原告は、同法第五六八条第一項に従い右競売事件の右債務者に対して、競売代金の減額を請求したが、右債務者および右物件の所有者のいずれもが倒産して無資力なため、その減額分の支払いに応じなかつた。

(五)  よつて、原告は、右同条第二項により、代金の配当を受けた被告に対し、右代金の減額分である金二四〇万八〇〇〇円の支払いを求める。

二、請求原因に対する答弁<略>

第三  証拠関係<略>

理由

一請求原因(一)の事実は、当事者間に争いがない。

二原告は、本件土地が旧国道に接面・隣接せず、通路のない準袋地であるとし、これを法律的な瑕疵とみて民法第五六八条による同法第五六六条の類推適用を主張するので判断する。

仮に、本件土地が評価書の記載とは異なり、原告が主張するような場所に位置し、公道に通ず道る路のない袋地であるとしても、以下述べる理由により、原告の主張はそれ自体失当といわなければならない。すなわち、土地が、道路に接面・隣接していない場合は、隣地所有者との間で囲続地通行権による利用の調節の余地を残すけれども、なお目的物の利用における環境的ないし経済的な欠点をなすものであつて、これを民法第五六六条第二項の地役権が存在しない場合に準じて考えるのは、その制限列挙的規定の趣旨から許されず、従つて、これを物の瑕疵(なお、民法第五六六条以外のその他の法律的欠点とみても同様である)として理解するのが相当であり、このことが、また、競売の確実を期することができるものとして結論の妥当性を肯定することができるであろう。そうすると、民法第五七〇条但書の強制競売は、広く国家機関による目的物の売却行為とみるべきであり、従つて、これに任意競売を含ましめるのが妥当である以上、結局、本件については、その担保責任が排除されることとなると考えざるを得ない。

三してみると、民法第五六八条による同法第五六六条の類推適用を前提とする原告の本訴請求は爾余の点について判断するまでもなく理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について、民事訴訟法第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(稲垣喬)

土地目録

札幌市南区南三五条西一〇丁目三八三番地一

一 宅地  八〇平方メートル三六右同番地五

一 宅地  一一四平方メートル六一

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